3月28日とは、私が応援しているダンスパフォーマンス団体「梅棒」の第8回公演『Shuttered Guy』(シャッター ガイ)のプレビュー公演初日の日付です。
このブログでは公演の感想というよりも、3月28日のできごとを話しながら、自分にとってファン活動をすることとは何なのか?を考えていきます。

梅棒とは?

梅棒とは、男性ばかりのジャズダンスユニットです。ダンス×演劇×J-POPをコンセプトに、年に1、2回本公演を行っています。
この団体は第6回公演で東京グローブ座を満員にするのですが、劇場公演を始めて4年足らずでそれだけの観客を動員したことで、業界では少なからず話題になった、と第7回公演のパンフレットに書いてあった気がします(が、そのパンフレットがなぜか家にありませんでした)。
梅棒の魅力といえば、幅広い世代を楽しませるJPOP選曲の妙だとか、ダンサー達が高い身体能力で漫画のようなオーバーアクションをする面白さとか、予想外の歌詞はめへの驚きとか、あげたらキリがありません。


個人的には、梅棒はとても現代的だなと思います。
梅棒の舞台では、舞台上で同時多発的にいろいろなことが起こります。
現代って趣味も思想も多様性の時代だと思いますが、公演では主軸となるストーリーはあるものの、群像劇的に登場人物たちのさまざまなストーリーが描かれ、最終的にすべてハッピーエンドとして回収されるので、観客は自分の好きな視点で感情移入して楽しめます。
あまりにも舞台の端で出演者が面白いことをし過ぎているので、「目がいくつあっても足りない」とよく言われますが、マルチタスクな現代人のテンポ感、特に日ごろあまり演劇を見ない人たちの感覚には、それくらいの情報量の多さが受け入れやすい気がします。

また、男性のメンバーが女性を演じることが多いのですが、それがごく自然に行われているのも好きです。観客を笑わせるための女装ではなく、男性が演じることで、重すぎない絶妙な女性らしさを表現したり、情の厚さを感じさせたり、強い肉体と精神を持つ女性像を描いたり、役の上での意味があります。
誰でも少なからずそうだと思いますが、自分自身、「女だから」とネガティブな意味で性別を意識することが無きにしもあらずなので、役を表現するのに性別の枠にとらわれない舞台を見ていると、開放的な気持ちになれます。

この公演のあらすじは、「昔ながらの商店街にデパートがやってきた! どうする商店街!?」という、極めてノルタルジックなものなのです。もしもビジネスや経済の視点とは関係なく、感情論でデパートは悪と決めつけ、「やっぱりデパートよりも温かい商店街がいいよね」と終わる話であれば異を唱えたくなったと思います。しかしそこは梅棒のうまいところで、愛・笑い・とんでも展開によって、合理的に人々がデパートを出て商店街に戻る流れを作ります。そういうのを見ていて「やっぱり現代的なぁ」と思ったものでした。

さよなら23区

梅棒はルーツが日大芸術学部にあるため、メンバーのブログを見ていたりすると、江古田や練馬周辺に関する話題がしばしば出てきます。
私は上京してからずっと練馬に住んでいたため、「おらが街にゆかりのあるアーティストを応援するぞ」という思いも込めながら、梅棒のファンをやっていました。

しかし、この春転勤で東京を去ることになりました。私にとって3月28日というのは、東京オフィスでの最終出社の日でもありました。
転勤については悲喜こもごもありますが、実は東京オリンピックを都民として日常生活の中に体験するのをとても楽しみにしていたので、その夢が叶わないかもしれないことには少なくともがっかりです。

そんな事情もあったもので、3月28日は、最高に楽しい夜にしたいと思いました。

プレビュー公演が開催されたのは北千住にあるシアター1010でした。また、今回の公演には元・生ハムと焼うどんの東理紗さんが出演しました。
私の友人で公演のたびに梅棒を見ている人がいて、北千住に住んでいました。そして共通の友人に生ハムと焼うどんのファンがいて、梅棒に興味がありながらずっと今まで予定が合わず見ることができませんでした。

そんなわけで、転勤が決まる前から「これは3人で見に行かねば」とファンクラブ先行でチケットを取っていたのですが、私の引っ越し前夜ということで、さらに大切な日になりました。

3月28日

転勤が決まってからは慌ただしく日々は過ぎ、あっという間に3月28日がやってきます。

その日は最高の1日でした。
友人と久し振りに会い、梅棒を初めて見た友人は公演を楽しみました。劇場では、同行者たちの友人で、客演キャスト目当てで初めて梅棒を見に来た人と出会いました。その人も公演を非常に気に入っていました。
公演が終わった後はみんなで、北千住にある雰囲気の良いお店に行き、感想を話しながらほくほくとカレーを食べました。
私が転勤ということで、お久しぶりな人も仕事終わりにかけつけてくれました。
梅棒を見た後に過ごす夜として、こんなに楽しいことはありませんでした。

そして公演内容!
前に触れたように商店街を舞台にした話なのですが、その商店街のモデルとなったのは江古田。私の住む練馬のとなり町です。
都知事やGINZA SIXなど都民の時事ネタを詰めこみ、「ああ、平成の東京ってこんな感じだったよね」と、東京でのいろいろな思い出が頭を巡り、まるで私のための舞台のように思えました。
練馬に住み明日東京を去る私の背中を、押してくれているみたい。応援しているものと自分の人生が重なる、天文学的な偶然ですが、こんなファン冥利につきることはありません。


私はオタク気質なので、人生の中で常に何かしらのもを推して生きているのですが、私にとってその本質とは、「どこかにいる、誰か」を求める気持ちなのかな、と思います。
通常の人間関係だと、自分が相手に何かした影響のフィードバックを得ることはそれなりに可能ですが、ファンと推しの関係だと格段にブラックボックス的になります。こちらが応援する気持ちで言葉をかけたり行動を起こしたとしても、それが本当にどれくらい支えになっていたのかどうかはわかりません。
ただ私はそういう距離感が結構好きです。フィードバックがない分、いくらでも夢を見れますから。「自分の思いが、どこかにいる誰かに、きっと伝わっている」「自分の存在がきっといい影響を与えている」、そう信じることができれば、自分自身の存在価値を肯定できます。

近しい人にエールを送られるのはもちろん嬉しいですが、私と関わりの無い第三者が(この場合梅棒が)、偶然転勤となった私の偶然東京で最後に観劇する夜に、なんと私の地元を描いた公演をしてくれた。偶然だから、それを果てしない奇跡と捉えることができるんです。偶然だから、梅棒かもしれないしひょっとしたら宇宙の真理のような何かかもしれないし、とりあえずきっと、どこかにいる誰かが、私の人生を応援してくれているんだと思えるんですよね。それがどんなに心強かったことか。それがどんなに心にかかる雲を吹き飛ばしてくれたことか。

その後引っ越しをすませ、現在では徐々に新しい土地での生活に慣れつつあります。
3月28日は確かに最高の夜でしたが、それが人生の喜びの頂点だとすると、それはそれでこの先の長い人生寂しすぎるので、もっと楽しい思い出を、これから新しい土地で作っていけるといいです。